Zone 2 トレーニング

浦和ラッキング — Week 0 ベースライン計測


今日の目的

今日は山に行きません.

近所の浦和を5kgのザックを背負って,Zone 2(心拍108-125bpm)で1時間歩くだけ.

これが「ラッキング」です. Rucking(ruck = 軍用バックパック)= 荷物を背負って歩くトレーニング.特別な器具もジムも要りません.ザックと靴があれば,近所の道がトレーニング場になります.

なぜ今日これをやるのか

16章の山行記録を書く中で,2つの宿題が残りました:

  1. R9(箱根)で膝が壊れた — 累積下り2,324mでエキセントリック損傷.忍者ステップ(小幅歩行)は導入済みだったのに壊れた
  2. 有酸素ベースの維持 — 山に行かない週でも心肺の「燃費」を育て続ける必要がある

今日の浦和ラッキングは,この2つの宿題に取り組む「山の外トレーニング」のWeek 0(出発点の計測)です.


測定データ

指標
ルート (ルート名)
距離 ___km
累積標高差 ___m
ザック重量 ___kg
時間 ___分
平均HR ___bpm ← ★この数字が6週間後に下がるかを追跡
最大HR ___bpm
Zone 2比率 ___%
天候 ___℃

🤔 なぜ平均HRが重要なのか?

同じルート・同じザック重量・同じペースで心拍が下がるということは,心臓が1回のドクンでより多くの血液を送れるようになったということ.エンジンの排気量が上がった証拠です.

前回の近所ウォーキング(5/13)は平均HR 121.7bpm.今日の数字と合わせてベースラインを確認します.


「山の外」で何を鍛えているのか

ラッキング = エンジンの燃費改善

Zone 2(会話できるギリギリの強度)で歩き続けると,体の中では4つのことが同時に起きています:

🔧 ミトコンドリアの増殖 — 筋肉の中のエネルギー工場が増える.同じ酸素からより多くのATPを生産できるように

🔧 毛細血管の発達 — 筋肉への酸素の配管が太くなる

🔧 脂質酸化能力の向上 — 脂肪(無限の軽油)を使う回路が強化され,糖質(有限のハイオク)を温存できる

🔧 副交感神経トーンの向上 — 自律神経のブレーキが強くなり,安静時HRVが改善

山に行けない日でも,心肺の「育てる日」はできる. 80/20の法則(第11章)で言えば,今日は80%側の日です.


ブルガリアンスクワット = シャシーの強化

ラッキングと交互に,ブルガリアンスクワット(BS)を始めました.

後ろ足を椅子に乗せて,前脚1本で「3秒かけてゆっくり下ろす」.この「ゆっくり下ろす」が,下山時に大腿四頭筋がやっている仕事(エキセントリック収縮)と同じ動きです.

なぜBSなのか?箱根で膝が壊れた原因は,エキセントリック収縮の累積が筋肉の損傷閾値を超えたこと.対策は2つ:

BSを繰り返すと,筋束が物理的に長くなります[1].長い筋束は引き伸ばしに対する余裕が大きい.同じ距離の下りでも,筋線維の「伸び率」が小さくなり,壊れにくくなる.

自動車で言えば,ストックはエアバッグ(衝突時の被害を減らす),BSはフレーム剛性の向上(そもそも壊れにくくする).

BSはさらに,片脚バランスで中殿筋(骨盤の水平維持)と固有受容覚(足の位置感覚)も鍛えるので,膝の安定性・疲労時のバランス維持にも効きます.1つのエクササイズで5つの問題を同時に解く,登山者にとっての最強種目です.


6週間の計画

月: ラッキング 1h(Zone 2, 5kgザック)
火: BS 8回×両脚×2set → 12回 → 15回(漸進)
水: ラッキング 1h
木: BS
金: ラッキング 1h
土: ⛰️ 山行 or 休息
日: 休息

6週間後に同じルート・同じ条件で再計測します.

今日がWeek 0.ここからどれだけ変化するかの出発点です.


この先のストーリー

5/24   ← 今日(Week 0 ベースライン計測)
  ↓ 6週間
7/5    Week 6 再計測(平均HRが下がるか?)
7/6    都岳連マウンテンスクール第2期 申込
  ↓
9/5-6  木曽駒ヶ岳&宝剣岳(2,956m)
       鍛えた体で信州グレードD級の鎖場・岩稜に臨む

16章は「なぜ壊れるかを解明する物語」でした.

ここからは「壊れない体を作る物語」です.

まずは今日,平地を歩くことから.


<参考文献>

[1] Franchi, M. V., et al. (2017). Architectural, functional and molecular responses to concentric and eccentric loading in human skeletal muscle. Acta Physiologica, 210(3), 642–654.

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